関連業界の格好のPR手段
「やくざから足を洗うという勇気は確かに貴いが、それ以上に貴いのは、やくざにならないという勇気です」
ローカルラジオ局の番組での司会者の言葉である。
なるほど、と思わずうなった。
暴力団関係者から抜けるというのは大変だ、とテレビドラマやら小説やら映画やらで、本当かどうかわからない情報を吹き込まれている私だが、たしかに町内会の役員をやめるのですら一苦労なのだから、裏社会から脱する困難さは想像するに余りある。それをなしとげんとする者の勇気には頭が下がるが、しかし、肝心なのはそういう社会に入らないことだ。誘惑や脅迫をはねのけて堅気を通すことこそ本当の勇気だろう。
足を洗うのを励ますのではなく、そうならないように社会全体で警鐘を発する。これは、たとえば覚醒剤などの麻薬にも共通することだ。
麻薬常習者がそこから立ち直るのは大変な事だが、社会は立ち直ることを絶賛するのではなく、そうなってはならないと様々なチャンネルで麻薬に手をそめない勇気を喚起している。
ところが、こと自己破産、あるいはその大きな原因のひとつである多重債務については、様相が異なる。自己破産の体験談のホームページを見ると、自己破産を様々な切り口から勧める。しかしそれだけではなく、キャッシングだのローンだの、法律事務所だの、自己破産寸前の者がすがりたくなる業種のPRがどっさりと盛り込まれている。まるで自己破産を勧めることで結果として多重債務者を食い物にしているかに見える。
WEBサイトには、自己破産についてはこれを防ぐ機能はなく、そうなった場合にそこから脱するノウハウだけが満載されているのだ。片手落ちではあるが、そもそもインターネットに良心を求めること自体、難しい。そんな中で、自己破産の体験談は、前述のとおり、関連業界の格好のPR手段になってはいるが、それなりに一定の予防効果をもっていると言える。